【自己破産の処理事例2|若年者の少額管財事件】

若年者の少額管財事件

自己破産を法律家にお願いしたら、実際はどんな感じで進むのか?

 

弁護士が書いた本(※)に良い事例が載っていたので、要約を紹介します。

 

会話のやり取りや書式の見本まで載っている良書です。

 

詳細が知りたい人はぜひ入手してみてください。

 

※「事例に学ぶ債務整理入門」 民事法研究会 刊

 

この事例のポイント

1例目は自己破産の9割を占める同時廃止の例でした。

 

財産があればもちろん管財手続きですが、大方の破産者は破産申し立ての時点では何も持っていないことが多いです。

 

だから同時廃止になるわけですが、同時廃止が当たり前と思ってはいけません。

 

財産がなさそうでも管財手続きにされてしまうこともあるというのが、この2例目です。

 

そうなると費用も時間もよけいにかかります。

 

申立人の弁護士はそうならないように注意したのですが、裁判所の判断は管財手続きでした。

 

まして経験の浅い、または能力の低い弁護士の場合、そういう事になるリスクは高まります。

 

依頼者の概況

相談者Xは25歳の男性会社員。

 

有職者の妻と家賃7万7000円の賃貸住宅に住んでいる。

 

手取り月収25万円に対し、8社から800万円近い借金がある。

 

不動産、車、預貯金などはないとのこと。

 

初回相談

甲弁護士は借金が増えていった経緯について尋ねた。

 

借り始めたのは高卒で働いていた時で、使途はこづかいの足しなどで少額のキャッシングを利用するようになった。

 

最初に借金大きく増えたのは、20歳の頃、転職のため退職したが、半年くらい仕事が見つからなかった時。

 

次に大きく増えたのは同棲することになって住宅費用が必要になった時。

 

その次は経営難に陥った父親を支えるために借り入れ、借金はさらに膨らんだ。

 

おまとめローンを借りて、いったんは他の借金を完済したが、また新たな借り入れ先が増えていった。

 

当時の給料が手取り16万円程度だったこと、結婚することになったこと、破産した両親の住む場所を確保してあげる必要があったことなどにより。

 

借り入れ総額は約800万円に達し、Xは返済に疲れてうつになりかかっている。

 

解決方法としては自己破産を希望しているが、住民票に載るとか選挙権がなくなるといったデマを信じて怖がっている。

 

甲弁護士は誤解を解いてXを安心させた。

 

甲弁護士の考察

借り入れの状況から判断して、過払い金はあったとしてもわずかと推定される。

 

任意整理は不可能、持ち家もないので個人再生を選択する意味もない。

 

当人も抵抗がないようなので、基本は自己破産の方向。

 

ただし、聞き取りの情報は信頼性が低い。もっと調べたら状況が変わる可能性はある。

 

受任

甲弁護士はひとまず自己破産の方向で受任する。

 

財産がないようなので同時廃止希望で行くが、負債総額が大きいので管財手続きにされる可能性もあることを説明。

 

その場合、破産管財人が指名され、20万円を支払い、郵送物を管理され、旅行・転居が制限される。

 

債権調査結果と方針の確定

甲弁護士は受任当日中に各債権者に介入通知を出し、取引履歴の開示を求めた。

 

しばらくすると資料が届いた。

 

引き直し計算で多少の過払い金は発生したが、債務総額は650万円となり、やはり自己破産しかないという結論になった。

 

破産手続き申立て

甲弁護士は必要書類を携えて東京地裁民事第20部へ向かった。

 

東京地裁は即日面接といって、申し立て当日に裁判官と弁護士が面接し、特に問題がなければその日のうちに破産開始決定がなされる。

 

簡素な同時廃止を希望していたが、裁判官は引っかかるものがあったらしい。

 

Xはまだ若く、有職者の奥さんもいる。

 

まず、民事再生を選択して、奥さんと協力して返済していくことは考えらなかったのか、と訊いてきた。

 

甲弁護士はX夫妻間の感情的な関係を説明して、それは難しかったと説明した。

 

すると裁判官は、負債総額が大きい事を理由に管財事件とすることを決めてしまった。

 

親を助けるという事情もあったにせよ、金額が大きいので念のため資産状況や免責について詳細な調査をすべきである、と。

 

これで20万円の管財費用が別途かかることになり、支払いは毎月5万円の4回払いとされた。

 

管財人初回打ち合わせ

その後、裁判所から破産管財人の弁護士名と第一回債権者会議の予定の連絡が入った。

 

甲弁護士は破産管財人弁護士の事務所を訪ねた。

 

若手の女性弁護士で正義感に溢れ、厳しい調査を行う熱意に満ちていた。

 

自己破産は債権者の権利を犠牲にする行為である。

 

Xはそれを十分理解せず、簡単に借金をなくせると安易に考えているのではないか?

 

管財人はそうした疑いを持っている様子だった。

 

彼女はまず、誠意をもって生活再建に取り組んでいるか監督するために、Xに家計簿をつけ、毎月持参して説明することを求めた。

 

家計簿を郵送させることはあるが、毎回面談を要求するのは異例である。

 

また、妻の協力が得られないなら、その事情を妻の意見書として提出するように求めた。

 

その後

Xが毎月、管財人の事務所を訪問するにあたり、次のようなアドバイスをした。

 

  • 夫婦で協力して生活再建に努力していることを伝える
  • 失礼のないきちんとした身なりを心がけるが、派手なのはNG
  • 「破産して生活が楽になった」というようなことは言ってはいけない

 

妻の意見書は実現しなかったが、かわりに甲弁護士が上申書を作って、管財人に事情を説明した。

 

債権者集会

当日、Xと甲弁護士は裁判所で待ち合わせた。

 

会場で順番を待っていると、Xの名前が呼ばれ、指示されたテーブルについた。

 

出席者は裁判官、破産管財人、X、甲弁護士の4人のみ。

 

債権者は金融業者ばかりなので、破産客の債権者会議になど出ない。

 

まず、管財人が裁判官に、債権者への配当がないこと、免責に問題がないことを報告。

 

次に裁判官がXに、申し立ての時から特に変化した事情がないか確認。

 

「集会」の内容はたったこれだけで、5分で終了した。

 

手続き終了後

その後、Xに対して免責決定がなされ、免責許可決定書が甲弁護士の事務所に届いた。

 

甲弁護士が報告すると、Xは感謝の言葉を述べた。