ほとんどの仕事は問題なし
自己破産の後の生活再建について、読者と一緒に考えていきたいと思います。
今回は、現在の仕事を続けるという選択肢についてです。
ほとんどの職種に影響なし
自己破産の手続き中は職業制限を受けますが、その職種は限られ、自己破産を申し立てた後もほとんどの仕事は切れ目なく継続できます。
自己破産を理由に解雇するのは違法なので、万が一勤務先の人に知られても堂々としていればいいのです。
破産者ができない仕事
破産手続の間は資格を失う仕事はあります。
下記が代表ですが、詳しくは自己破産者の職業制限のページを見てください。
- 弁護士、税理士などのいわゆる士業
- 生命保険募集員
- 損害保険代理店
- 古物商
- 質屋
- 警備業者および警備員
- 建設業者
- 風俗業者
弁護士のような「偉い先生」は全部ダメなのかと思いきや、医師は自己破産で資格制限を受けません。
資格制限を受ける期間
しかも、上記のような職種でも資格制限を受けるのはごく短い期間なのです。
自己破産したら永遠にその仕事にはつけないと思っている人もいますが、間違いです。
NGなのは自己破産申立てから免責確定して復権するまでの間だけ。
自己破産件数の9割を占める同時廃止手続になった場合は、たかだか3カ月程度です。
残り1割を占める管財手続になってしまった場合も半年~1年強くらい。
それが終わって復権すれば、法的な立場は自己破産前と完全に同じで、どんな仕事にもつけるのです。
宅建士の問題集より
宅地建物取引士も自己破産で資格制限を受ける職業です。
筆者の手許にある宅建士の教科書に次のような正誤問題が出ています。
○・× 破産者は、復権を得た後5年間は免許を受けることができない。
正解は×で、復権すれば直ちに免許を受けることができる、と出ています。
このように「破産者」と呼ばれて資格制限を受けるのは、たかだか3カ月、長くて1年強で、復権すれば元通りというのは本当です。
会社役員はどうか?
以前は会社役員も復権までは資格制限を受けました。
しかし、2006年の会社法改正により、免責確定前でも取締役になれるようになりました。
ただし、破産申立ての時点で民法の規定により、いったん取締役の委任契約は終了して退任となり、再度会社から選任されることが必要です。
現実論はどうか?
以上のように今の仕事を続ける上で大半の職種で自己破産は影響なく、資格制限を受ける職種においても影響は限定的です。
法律の上では。
しかし、現実には今いる会社などによって少々違う可能性もあります。
例えば、自己破産の事実を会社に知られてしまった場合、解雇はされなくても責任ある仕事、お金を預かる仕事は任せてもらえず、昇進ペースが鈍くなる可能性はあります。
対外的な信用イメージを重んじる会社なら、解雇ではないけれど、自主的に辞めざるを得ない方向に持っていかれる可能性はあります。
また保険の外交員、中古ブランド買取の査定員(古物商)などは、3カ月~1年強の間、仕事ができなくなるわけです。
こういう職種では当然、会社に破産を知られますし、長期休職または別部署への配置転換にしてほしいと言っても、難しいのではないでしょうか?
「破産したから」という理由でなく、「雇用の目的である職務が資格制限で長期間遂行できないから」という理由で解雇される危険はあります。
司法書士や行政書士の場合、半年休業した後に再開して、また一から顧客や信用を構築するのはどんなに大変か、という問題もあります。
このように、自己破産の影響は法律的には軽微でも、現実論は結構重いものになる可能性はあります。
とにかく前に進む
しかし、上記のようなことを心配しすぎてもきりがありません。
今はまず目の前の危機を切り抜けることです。
資格制限のない職種
当面の継続には問題ありません。
財政面が激動していますから、仕事の環境だけでも以前と同じだと心の安定につながります。
しばらくは今の仕事を続けましょう。
返済はなくなる一方、お給料は継続して入ってくるので、楽になります。
弁護士や裁判所への支払いはありますが、多少の貯金はできるでしょう。
動くにしても少しお金が貯まってからにした方が無難です。
自己破産の事実はバレずに済むかもしれないし、バレても仕事を頑張っていれば認めてもらえる可能性もあります。
対外的な信用を重んじる業種・職種の場合、上司や経営者が破産経験者に冷たい場合などは、その会社に居続けても将来は暗いかもしれません。
クビにはならないけど、昇給・昇進が望み薄とわかってくるかもしれません。
その場合は、しばらくして落ち着いたら転職を考えたらいいのです。
資格制限を受ける職種
まず、他の職種への配置転換で雇用を続けてもらえないか、交渉してみましょう。
どうしてもその職種がやりたいなら、免責・復権後に復帰を希望してみたらいいし、無理なら他社を受験してみるのもいい。
法律的にはOKでも、会社の内規や暗黙のルールで無理かもしれない。
しかし、案外OKとなるかもしれないではないですか。
そして、この際、視野を広げて別の仕事に移る方がもっといいかもしれません。
筆者としては、ハンデを負い続ける職種にこだわるより、新天地で勝負する方がいいと思います。
現在の危機を新しいチャレンジのきっかけと捉えていただきたいです。