自己破産の経験を生かして人助け
自己破産を検討している人は、すでにそれを経験して立ち直っている人の話を聞きたいだろうと思います。
自己破産を経験して今は借金問題のカウンセラーをしている人を見つけたので紹介します。
安藤一平氏のプロフィール
1959年生まれ。慶應義塾大学卒業。
銀行に10年勤めた後、家業を継ぐために帰郷。
家業はタクシー会社、コンビニ、ガソリンスタンドなど複数の事業を運営。
その後、家業が傾いて債務整理に苦労した後、自分自身も自己破産を経験。
現在はその経験を生かして、多重債務者の相談に乗っておられます。
福島県多重債務体験者の会(東北生活再建塾)を運営。
複数の著書あり。
- サラ金整理
- お金の学校
- 私は自己破産しました
「私は自己破産しました」の感想
安藤氏の自己破産の状況を見ると、物のわかっていない弁護士に安易に自己破産に導かれたようです。
今日の債務整理では、まず利息の引き直し計算をし、過払い金が発生する場合はそれを控除した残債の額をもとに整理方法を選ぶのが定石です。
まずは任意整理から検討し、個人再生、そして自己破産は最終手段です。
しかし、彼が自己破産したのは平成18年、2006年。
これは改正貸金業法が成立した年です。
この時、グレーゾーン金利やみなし弁済の廃止が決まり、過払い金請求ができることがはっきりし、債務整理の世界が大きく変わろうとしていました。
しかし、法律家への浸透はまだ不十分で、特に東北の田舎ではなおさらだった。
それで過払い金の計算もしないですぐに自己破産させる弁護士に運悪く当たってしまったのでしょう。
彼の負債は800万円だったのですが、自己破産後に過払い金を計算すると794万円もあったそうです。
ということは、過払い金で相殺していれば借金の額はたったの6万円だったということです。
つまり、自己破産どころか債務整理そのものが必要なかったことになります。
非常に薄い本なのに何度も「自分は自己破産する必要などなかったのではないか」という言葉が出てきて、そのたびに「自己破産の経験があるからこそ今の自分があるので後悔はしていない」と打ち消しています。
この同じ想念の反復にこそ、悔やんでも悔やみきれない思いが読み取れます。
債務整理の方法については、「自己破産より先にとにかく過払い金の計算をまずしろ」という啓蒙に尽きます。
出版は2007年でもう10年以上も前。
利息の引き直し計算を真っ先にやるのはもう定着していると思いますが、今でもよくわからないまま自己破産させる弁護士はいるかもしれません。
あと、グレーゾーン金利撤廃から長い時間が経って、過払い金が発生する人もずいぶん減りました。
過払い金によるラッキーな債務軽減~解消は過去の話になりつつあり、今後の債務整理はある意味、従来よりシビアになってくると思います。
体験談としてはよかったが、今から読んで参考になる本ではない気がします。