【同時廃止と管財手続|自己破産の手続き】

財産が乏しくても管財手続になることあり

自己破産を申し立てると、その後の手続きは2種類に分かれることを説明しました。

 

換金できる財産が一定以上ある場合は管財手続となり、ほとんど財産がない場合は同時廃止となります。

 

単純化するとそうなのですが、実はもう少しいろいろあるので、ここで説明します。

 

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2種類の破産手続き

件数ベースでは、同時廃止が9割を占めます。

 

しかし、破産とは本来は財産を処分して債権者に分けることを意味し、考え方としては管財手続きが標準で同時廃止は例外という位置づけなのです。

 

どちらの手続になるか事前にある程度予想できますが、最終的に決めるのは裁判官です。

 

管財手続

債務者の財産を裁判所が管理して売り払い、代金を債務者に平等に分ける手続きです。

 

その後に免責ですべての借金を帳消しにします。

 

財産の管理・売却処分・配当に責任を持つ管財人に、債務者が依頼しているのとは別の弁護士が任命されます。

 

管財手続になってしまった場合、管財人に最低限の報酬を確保するために、事前に管財予納金を20万円以上収める必要があります。

 

つまり、同じ自己破産でも同時廃止より手続きにお金がかかります。

 

管財手続きの流れ
  1. 破産申立て
  2. 破産手続開始決定
  3. 破産管財人の選任
  4. 管財人との打ち合わせ
  5. 債権者集会・免責審尋
  6. 免責決定
  7. 免責確定

 

財産の売却が終わると債権者会議を開き、配当案を示して問題ないか確認します。

 

この時に債務者を免責していいかどうか判断するための免責審尋も同時に行います。

 

破産申立てから免責確定までかかる時間は、半年から1年です。

 

同時廃止手続

管財人の報酬も出ないほど財産のない人は、破産手続き開始決定と同時に終了を宣言します。

 

破産手続きは一瞬で終わり、2カ月ほどして免責審尋があります。

 

これは、免責して問題ないか判断するための裁判官の面接です。

 

東京地裁のように破産者の数が多い裁判所では、流れ作業で一瞬の面接になるようです。

 

それから2週間ほどで免責決定の通知が届きます。

 

同時廃止手続きの流れ
  1. 破産申立て
  2. 破産手続開始決定
  3. 免責審尋
  4. 免責決定
  5. 免責確定

 

最初から最後までの所要期間は最短3カ月、長くて半年程度です。

 

2つの手続きの分岐ポイント

さて、管財手続と同時廃止はどのように振り分けられるのでしょうか?

 

基準は次の2つです。

 

  1. 20万円以上の資産があるか?
  2. 免責上問題があるか?

 

「免責上の問題」というのは、借金の主な使途がギャンブルや風俗等の遊興だったとか、破産の前に資産を隠そうとした、とかいった問題です。

 

上の2つの質問への答えがどちらもNOなら、同時廃止です。

 

例えば、借金の理由は生活苦や家族の病気などで、預金も残りわずかで、金目の家財道具もない、といった場合、ほぼ確実に同時廃止です。

 

逆に、まだ宝飾品、高級ブランド品、高級車、不動産、株券などが何百何千万円も残っている場合、管財手続になることも明白です。

 

経営者や芸能人の自己破産の場合、借金の額が億単位だったりするので、自己破産の段階でまだ相当の財産があることもよくあります。

 

一般人が消費者金融への数百万円の負債で自己破産する場合は、財産はほとんど何も残っていないことが多いです。

 

このように、管財手続か同時廃止か、素人目にも明らかな場合もあります。

 

しかし、どちらになるのか微妙なこともよくあり、申立て代理人(頼んだ弁護士)の読みがはずれて、裁判官が異なる判断を下すこともあります。

 

これについてはもう少し後で説明しましょう。

 

免責上の問題を理由としての管財手続

財産を換金して債権者に配当するためでなく、免責上の問題がないか調査する目的で管財手続にされることがあります。

 

偏頗弁済が疑われる場合

自己破産では債権者を平等に扱うことが厳密に求められ、これに違反すると免責が認められなくなります。

 

よくあるのは、自己破産する前に親からの借金だけ先に返しておくなどの行為です。

 

あるいは連帯保証人に迷惑がかからないよう、保証人付きの借金だけ先に返すなど。

 

こうした行為が見つかると、最悪は免責不許可になり、せっかく自己破産しても借金が帳消しになりません。

 

それらの事実を調査する目的で管財手続が取られる場合があります。

 

お金の使途に問題が伺われる場合

ギャンブル、風俗、旅行など遊興・娯楽が借金の主な使途だった場合、免責不許可となりえます。

 

そこを詳しく調べる目的で管財手続が取られる場合があります。

 

財産隠しが疑われる場合

財産隠しも重大な違反であり、免責不許可となります。

 

裁判官もプロですから「実はこんな資産がほかにあるのではないか?」ということは色々思いつきます。

 

生命保険を解約したらいくらになるか、今仮に退職したら退職金はいくらになるか、なども財産のうちです。

 

意図的ではなくそういうものが漏れていた場合も、裁判官が調査を命じることはあります。

 

どちらが適切か微妙な場合の判断

管財手続きになるか同時廃止になるかは、残っている財産の規模と免責上の問題の有無で決まると言いました。

 

しかし、それを判断するのは裁判官です。

 

申立て代理人(依頼した弁護士)が同時廃止だろうと思っても、裁判官は「こういう財産がまだあるかもしれないから調べなさい」と管財手続にする可能性はあります。

 

例えば本サイトに収録した事例では、申立て代理人は同時廃止を狙っていたのに、裁判官は「負債額が大きい」という理由で管財手続にしています。

 

逆に申立て代理人が「使途がめちゃくちゃだから調査型管財手続かな」と心配しいていても、あっさり同時廃止になる場合もあります。

 

その裁判官が「破産者」というものについてどういう気持ちが強いかも影響します。

 

「約束を守れないだらしない奴らだから厳しくする必要がある」という考えが強いのか、「可哀そうだから生活再建を少しでも楽にしてやろう」という気持ちが強いのか。

 

着任したてでやる気満々の正義感の強い裁判官なら、やたらと管財手続にしたがる場合もあります。

 

このようにボーダーライン上の案件がどちらの手続になるかは、多分にどんな裁判官に当たるかという運に左右されるのです。

 

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