すべてを失った今は起業のチャンス!
自己破産の後の生活再建について、読者と一緒に考えていきたいと思います。
今回は、起業という選択肢についてです。
自己破産者の起業に法的制限はない
自己破産したらもう独立して会社を興すこともできないと思い込んでいる人がいますが、全くの誤解です。
もともと取締役だった人は、自己破産すると民法の規定でいったん退任となります。
以前の法律では、その後に免責を得て復権となるまで(3カ月~1年程度)は取締役にはなれませんでした。
このことが誤解されて、「破産すると一生社長にはなれない」といった都市伝説が生まれたのではないでしょうか?
現在は法律が変わって、免責を得る前でも会社から再選されれば取締役に戻れることになっています。
さらに今の話は自己破産前に役員だった人の話で、これから起業する人にはどのみち関係ない話でもあります。
自己破産しても起業できるし、社長になれます。
免責後はもちろん普通の人と完全に同じ権利があるし、今は破産手続き中でも株式会社を設立できます。
破産して数カ月後にすぐ立ち上がるようなバイタリティーのある人もいます。
自己破産はむしろ起業のチャンス
もともと独立したかった人も、財産や収入を抱えているうちはなかなか踏ん切りがつかなかったのではないでしょうか?
起業して失敗したら住宅ローンや子供の教育費を払っていけるか?
今より収入が落ちる可能性もあるが、それがいつまでも続いたらどうしよう・・・などなど。
いろいろな心配に足止めを喰らって、なかなか行動が起こせなかったはずです。
財産や収入はあなたの生活を守るものでしたが、同時に人生を縛り付けるものでもあったのです。
しかし、自己破産後はすべてがなくなり、逆に言えば完全に自由です。
一度きりの人生。今こそ、独立の夢にチャレンジしてはどうでしょうか?
自己破産後の起業の障害
とはいえ、自己破産の経歴がある人間には高いハードルがあるのも事実です。
それは一言でいうと、金が借りられないということです。
単に融資の申し込みを断られるだけでなく、支払い能力の信用が必要なものがすべてNGになります。
- クレジットカードが作れない
- 事業資金が借りられない
- 事務設備のリース審査でさえも落とされる
- 事務所や店舗を借りる際の保証会社の審査が通らない
これは、信用情報機関に自己破産の事実が記録され、貸金業者・リース業者・保証会社などが審査の際に参照するからです。
いわゆる「ブラックリストに載った」状態です。
信用情報機関は3つあり、自己破産の情報保存期間は5年のものが2つと10年のものが一つです。
つまり、自己破産すると5~10年はブラックリストに載り、借り入れや賃貸でハンデを負います。
破産経験者の起業は、これをクリアする方法を考えねばなりません。
破産者の起業戦略
破産経験者が起業する上でポイントになるだろうことをまとめました。
自分で資金を蓄えたてから起業する
自己破産に至った人に、地道な貯金が苦手な人が多いのは否めない事実です。
「自分への先行投資」といった大義名分で、よく考えずに借りて使ってしまうことが多かったのではないですか?
そういう癖は起業がうまくいった後も危険な時限爆弾になります。
起業の前に悪い癖を治す意味もこめて、しばらく自己資金を貯めてからにするのも安全・確実でよいと思います。
小資本でできるビジネスを選ぶ
資金調達力がないのに大きな資本のいるビジネスを望むより、現状の自分が始めやすいビジネスを選ぶのが知恵というものです。
事務所を構えず、独立業者として下請けや応援をする方法は、幅広い業種で使えるでしょう。
お店をやるなら小さくてもできる商売を。わずか4坪で始めて成功した飲食店の例もあります。
インターネットビジネスは、小資本で始められるビジネスの究極形です。
妻など親族を会社の代表者にする
事務所の賃貸やリースの審査などをパスする上での施策です。
ただし、代表をお願いした人に絶対迷惑をかけない覚悟が必要です。
公的支援を利用する
長くブラックリストに載るので、民間の貸金業者には門前払いにされます。
しかし、公的支援には破産経験者でも利用できるものがあります。
小資本ビジネスの例
お金がなくてもできるビジネスの例を挙げてみました。ご参考に。
事務所を構えない独立業者
デザイナー、コピーライター、プログラマーなどを自宅でやったり、企業の机を間借りしてやることが考えられます。
測量や工事系の仕事も、下請けや応援を独立業者としてやることが可能でしょう。
コンサルタントなどは営業力があれば直で仕事を取ることもできます。
極小規模店舗
3~4坪の店なら小さい資本でも始められます。
例えば飲食店でそんな小さい店から始めて成功する人がいます。
最近の有名な例では、元野球選手の中村隼人さん。
わずか4坪の立ち食い焼肉店で年商1億円を超えています。
ただし、この人は自己破産とは無関係だし、経営者ではなく雇われ店長です。
インターネットビジネス
資金がゼロに近いような人でも始められ、うまくやれる人は短期間にリアルビジネスでは考えられない大きな収入を手にします。
その代表はアフィリエイト。ネット上で集客して客のサイトにアクセスを送り込み、物が売れたら手数料が入るビジネスです。
ネットショップなども考えられ、リアル店舗に必ず伴う物理的制約がありません。
例えばリアル店舗では立地条件が大切で、立地条件が悪いと客が来ず、駅前など条件がいいところは家賃が高くなります。
しかし、ネットショップなら日本中はおろか、外国語ができれば世界を相手に商売することも可能です。
リアル店舗では席数・回転率・店舗数などで売上の上限が制約され、店を大きくしたり増やすには大きな資金が必要です。
しかし、ネットショップにはそんな制約はありません。
唯一考えられるのはアクセスが多すぎてサーバーがダウンすることですが、その場合はサーバーをグレードアップすればいいだけで、経費の増加は微々たるものです。
公的支援情報
ブラックリストに載ると民間の貸金業者からは借りられなくなりますが、公的支援には自己破産者を助けてくれるものもあります。
日本政策金融公庫 「再挑戦支援融資」 |
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信用保証協会 「再挑戦支援融資」 |
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商工組合中央金庫 「再チャレンジ支援貸付」 |
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ある程度自己資金が貯まり、事業計画もしっかり練れた段階で相談してみてはどうでしょうか。
どん底から再起した人の事例
大場久美子(歌手・タレント)
レストランのサイドビジネスに失敗して、1994年(当時34歳)に自己破産しています。
しかし、現在はタレント活動とともにフットリフレクソロジーサロンを開業したり、さまざまな資格を取得したりして活躍しています。
南原竜樹(会社経営)
年商100億円を超える会社を経営し、テレビ番組「マネーの虎」で火を吐いていた有名社長でした。
しかし、その後に業績が急降下して100億円の借金を抱え、一時はホームレスになりました。
現在は、人材派遣業などで従業員3000人を超えるグループの総帥として復活しています。
この人が自己破産したという情報はないですが、自己破産に勝るとも劣らない苦境から復活したことは確かです。
柴田健二(経営コンサルタント)
上場間近と言われたベンチャー企業、(株)ソフトケーブルの社長でしたが、2002年に突然倒産。
自己破産から数カ月後にはITコンサルタントとして復活。
現在は忙しくて、儲かってもいるようです。
与沢 翼(会社経営)
インターネットビジネスで成功して「秒速で億を稼ぐ男」と呼ばれ、派手な散財ぶりがテレビでも有名でしたが、税金対策に失敗して倒産しました。
今はシンガポールで再起し、昔以上に儲けているようです。
実像は知りませんが、確かにキワモノ地味た成金ではあります。
しかし、それでも参考にはしたらいいではないですか。
破産者となった今、大切なことは今後の人生でとにかく成功することなのですから。
大切なのは現在の与信力
さて、起業がうまくいって軌道に乗ると、ある時勝負のタイミングが来るかもしれません。
借金してでも大きく打って出ないと、負け組になってしまうというような。
しかし、ブラックリストに載っている限り、絶対にお金は借りられないのでしょうか?
そんなことはないと思います。
破産経験者は「お金を貸すと危険な人物」とみなされますが、「お金を貸すことが禁じられた人物」ではないのです。
銀行などは慎重でしょうが、際立った業績を出し続ければ、きっと貸し手は現れます。
逆に10年経ってブラックリストから抹消されたからといって、必ず審査に通るようになるわけではありません。
門前払いはされなくなるだけで、その時点で収入がパッとしなければ、やはり借りられません。
大切なのは過去ではなく、今どれぐらい稼げているかなのです。
自己破産しても起業してガンガン業績を伸ばせば、明るい未来が開けます。
ぜひ、がんばってみてください!