最悪でもちゃんと生きていける
自己破産の後の生活再建について、読者と一緒に考えていきたいと思います。
今回は、生活保護という選択肢についてです。
失業状態で近い将来に就職できる見込みがなく、起業も無理なら、ひとまず生活保護に退避しましょう。
生活保護を受けることは恥ずかしいことではありません。
ひとまず保護に頼って時間のゆとりを持ち、今後の生き方を考えればよいのです。
相談・申請窓口
生活保護について知りたい、生活保護を受けたいという場合、どこに行けばいいのでしょうか?
それは市役所とかではなく、福祉事務所の生活保護担当です。
福祉事務所は、都道府県及び市には設置が義務付けられており、必ずあります。
町村レベルではある場合とない場合があります。
スマホ等で近くの「福祉事務所」を検索すれば見つけることができるでしょう。
受給資格
どんな人が生活保護を受けられるのでしょうか?
まず、厚生労働大臣が定める基準で計算される「最低生活費」というものがあります。
給与・年金・児童扶養手当・親族の援助などの収入の合計が最低生活費より低い人が生活保護の対象です。
「無差別平等の原則」といって、生活困窮に至った理由や過去の生活歴は問われません。
自己破産後の免責は、自己破産の原因がギャンブルや風俗では認められませんが、生活保護はそんな人でも受けられるのです。
なお、「申請保護の原則」といって、生活保護は自分から申請しないと受けられません。
苦しい生活をしていたら、福祉事務所の人が向こうからやってきて助けてくれるわけではないので、自分で調べて動きましょう。
支給の基本的な考え方
生活保護費は、「最低生活費」から「収入」を引いた不足分を助けるものです。
「補足性の原則」といって、まずあらゆる自助努力で「収入」を最大化することが求められ、それでもなお足りない部分を補足する位置付けなのです。
なにがしかの資産がある人は、まずそれを売って生活費にすることが求められます。
働けそうなのに働けない人は、まず就職活動をしなさい、働きなさいということが求められます。
給与・年金・児童扶養手当・親族の援助など、できる限りのものが「収入」にカウントされます。
生活保護を申請すると、事前に職員が家庭訪問し、生活状況や資産、年金給付などを徹底的に調べ上げます。
それでもなお足りない部分を生活保護費として支給するのです。
資産や収入があって何とかやって行けるのに、生活保護費を上乗せして楽をしようとするのはやめましょう。
発覚すれば返還を要求されます。
あと「世帯単位の原則」といって、例えば夫婦と子供の3人暮らしなら、一人一人に支給するのではなく、3人世帯合計で支給されます。
保護費の種類
保護費は次の8種類があり、状況に応じて単独、または組み合わせて支給されます。
医療扶助 | ケガや病気の治療費用。国民健康保険や後期高齢者医療制度からは脱退となり、現物支給(医療機関に直接支払われる)が原則です。 |
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生活扶助 | 第1類(個人ごとの衣食住費)、第2類(世帯で消費する光熱費)、各種加算(重度障害者加算等)の合計で支給されます。 |
教育扶助 | 被保護家庭の児童が義務教育を受けるために支給されます。 |
住宅扶助 | 家賃の支払いや住宅の修繕のために支給されます。 |
介護扶助 | 要介護または要支援と認定された被保護者に対する給付です。 |
出産扶助 | 被保護者が出産をするときに行われる給付です。 |
生業扶助 | 生業に必要な資金、器具や資材を購入する費用、又は技能を修得するための費用、就労のための支度費用(運転免許証)等が必要な時に行われる扶助です。平成17年度より高等学校就学費がこの扶助により支給されています。 |
葬祭扶助 | 被保護家庭に死者が出た時に葬儀費を支援する給付です。 |
最低生活費の計算例
物価は地域によって違うので、それが加味されて居住地域により最低生活費は少し変わります。
下記は平成27年度(2015年度)の例ですが、あくまでも目安情報として提供しています。
実際の金額は最寄りの福祉事務所に問い合わせてください。
20~40歳 単身の場合
東京都区部 |
第1類 38,430円 + 第2類 40,800円 = 生活扶助79,230円 |
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大阪府大阪市 |
第1類38,430円 + 第2類40,800円 = 生活扶助79,230円 |
三重県津市 |
第1類34,740円 + 第2類36,880円 = 生活扶助71,620円 |
佐賀県鳥栖市 |
第1類32,420円 + 第2類34,420円 = 生活扶助66,840円 |
東京都区部 4人世帯の例
夫41歳、妻38歳、子14歳、8歳の組み合わせの場合を見る。
- 第1類 151,135.5円
- 第2類 56,760円(4人世帯)
- 各種加算 20,000円(第1・2子の児童養育加算)
- 教育扶助 13,580円
- 住宅扶助 実費(69,800円以内)
給与・年金・手当・親族の扶助など一切の収入がない場合、上記の額が生活保護費として支給されることになります。
収入がある場合はそれを差し引いた差額です。
生活保護受給の手順
1.事前相談
まず、居住地域を所管する福祉事務所の生活保護担当に相談に行きます。
制度を説明してくれるとともに、各種の社会保障施策を活用できないか、一緒に考えてくれます。
2.生活保護の申請
事前相談で相手が受給できる可能性があると言ってくれたら、申請します。
3.調査・検討
家庭訪問をはじめ、いろいろな方法で下記の項目を調べ上げ、保護費を支給すべきか、金額はいくらが妥当かといったことを検討します。
- 生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
- 預貯金、保険、不動産等の資産調査
- 扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
- 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
- 就労の可能性の調査
4.生活保護費支給開始
厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から収入(年金や就労収入等)を引いた額が保護費として毎月支給されます。
受給中は、収入の状況を毎月申告する義務があり、福祉事務所のケースワーカーが年数回訪問調査にきます。
報告内容を偽ったり、ケースワーカーを騙して生活保護を長引かせるようなことはせず、保護に感謝しながら、生活保護を脱却できるように努力しましょう。
まとめ
以上のように、日本には生活保護というものがあるので、自己破産ですべてを失い、次の希望がまだ見いだせない状態でも、とりあえず生きてはいけます。
まずは債務を片付けて心の平安を取り戻しましょう。
必要なら生活保護も堂々と受けて、再起のプランを練ればいいのです。